ヨーロッパep35 🇫🇷 オランジェリー美術館
前回はパリの市内観光をしました。
今回はチュイルリー庭園の中にあるオランジェリーに行きます。
この規模の小さな美術館には、世界中のアートファンがわざわざ足を運ぶ特別な理由があります。それはクロード・モネの傑作《睡蓮》を展示することを目的に作られた贅沢な空間があることです。
オランジェリー美術館とは?
チュイルリー庭園の南西にひっそりと佇むこの美術館は、もともと19世紀にオレンジの温室(オランジュリー)として建てられた建物を活用して作られました。

“モネのための美術館”:光の設計と静けさ
美術館に入ると、地下の常設展示も魅力的ですが、まずは地上階の明るい楕円形の展示室に多くの人が進んでいきます。
ここはモネ自身の構想に基づき、自然光がやさしく差し込む設計になっています。観覧者は壁一面に広がる《睡蓮》を鑑賞することができます。
モネは第一次世界大戦の終結を祝い、「人々に心の安らぎを与える場」としてこの作品を寄贈しました。空間全体が“平和のモニュメント”とも言えるのです。
展示されている《睡蓮》は全部で8点
展示室は2部屋に分かれており、それぞれの壁に幅約6メートルの《睡蓮》がゆったりと掛けられています。
この《睡蓮》は、晩年のモネが自宅の庭(ジヴェルニー)で描き続けた、ライフワークとも言える作品群です。オランジェリーに展示されているのは、1915年から1926年にかけて描かれた大作8点で、以下のような構成になっています:
《朝》

《雲》

《日没》

《緑の反映》

《明るい朝の柳》

《二本の柳》

《朝の柳》

《木々の反映》

それぞれに明確な輪郭はなく、空、雲、木々、水面がゆるやかに溶け合っています。時間の流れや天気による変化が、色彩と光のグラデーションで表現されていて、ずっと見ていても飽きることがありません。
《睡蓮》をより深く味わうヒント
1. 距離を変えて見る
近づくと荒々しい筆致や絵の具の厚みがわかり、遠くから見ると水面の奥行きや静けさが伝わります。
2. 時計を気にせず、ただ“居る”
ベンチに座ってしばらくぼんやりするのもおすすめ。自然光の移ろいで作品の表情がほんの少しずつ変わっていくのが感じられます。
3. モネの視力にも思いを馳せる
晩年のモネは白内障を患っており、色の見え方が変化していました。そのせいか、後期の《睡蓮》には深い青や赤が使われているのが特徴です。視力の変化さえも作品に溶け込んでいるようです。
地下には印象派・エコール・ド・パリの名作も
地下の常設展示も見逃せません。ルノワール、セザンヌ、ピカソ、マティス、ユトリロ、モディリアーニなど、印象派から20世紀前半の作品がぎっしり。






人が少なく、静かな空間でゆったりと作品を鑑賞できるのも、オランジェリー美術館ならではの魅力です。
まとめ
パリといえばルーヴルやオルセーが有名ですが、心を落ち着けてアートに浸りたいという方には、オランジェリー美術館がぴったりです。
また立地的にもルーブル美術館を訪れた後に立ち寄れる場所にあるため、その他の観光と合わせて一日楽しむにもちょうどいいです。

というわけで今回はここまでとなります。
次回はモン・サン・ミシェルをご紹介します。
ここまで読んでいただきありがとうございました。